賃貸併用住宅とは?メリットやデメリット、建築段階から賃貸経営までの流れを知ろう

2024年3月8日

賃貸併用住宅とは、一棟の建物の中にオーナーが居住する空間と、賃貸住宅とが併用されている物件のことです。この賃貸併用住宅が、土地活用のひとつの方法として注目されています。本記事では、賃貸併用住宅のメリットやデメリット、建築段階から賃貸経営までの流れを紹介します。

賃貸併用住宅とは

まずは賃貸併用住宅とはどのような住宅なのか、特徴とタイプについて解説します。賃貸併用住宅が自分に合っているかを判断する上で、これらの情報をチェックしましょう。

住むスペースと貸し出す部屋を併用した住宅

賃貸併用住宅は、オーナーが住むスペースと、貸し出す部屋を併用しています。土地活用したい人にとって家賃の収入を住宅ローンの返済に充てられるなど、金銭面においてのさまざまなメリットがあります。また、間取りによっては将来二世帯住宅として使うことも可能です。賃貸併用住宅を建てる際には、今後どのように使っていくかという長い目で見た計画を立てることも大切になってきます。

戸建てや賃貸、マンションなどのタイプがある

賃貸併用住宅の構造には、戸建住宅タイプ、賃貸アパートがプラスされているタイプや、賃貸マンションの一部がオーナーの自宅になっているタイプなどの構造があります。また、自宅部分と賃貸部分の間取りの分け方にもいくつかの選択肢があります。特に戸建住宅タイプの場合は、プライバシーを十分に配慮して設計するのが良いでしょう。どんなタイプにするかは、土地が持つ性質や条件、オーナーの希望などから決めていきます。

賃貸併用住宅のメリット

賃貸併用住宅を建てることで得られるメリットは、主にお金にまつわることが多く挙げられます。細かい条件はありますが、まずは大枠を掴みましょう。

コストを抑えて賃貸物件が建てられる

賃貸併用住宅は、1棟の建物に自宅部分と賃貸部分、2棟分の部屋数を作るため、別々に2棟の建物を建てるよりコストが削減できます。これは建築費用の大半を占める、基礎と屋根にかかるコストが1棟分で済むためです。

条件を満たすと低い金利で住宅ローンを利用できる

賃貸併用住宅を建てる際、条件を満たせば低い金利で長期間の借りられる住宅ローンを利用して建てることが可能です。アパートローンの一般的な金利が2~5%程度なのに対し、住宅ローンは諸条件にもよりますが、おおむね1%前後の金利で借りられます。

また、自宅部分が占める面積に応じた「住宅ローン控除」が使えるのも大きいでしょう。このように大きなメリットに関わってくるため、住宅ローンが適用される賃貸併用住宅を設計するのが望ましいと言えます。

家賃収入で住宅ローンを返済していける

次のメリットは、賃貸部分の家賃収入から住宅ローンを返済していける点です。住宅ローン返済の負担が軽減されるのにとどまらず、返済負担をゼロにしたりプラスの収益をあげたりできるケースもあります。どのように経営できるかの見通しを持つためにも、しっかりした返済計画を立てることが大切です。

さまざまな節税効果が見込める

賃貸併用住宅は、一定の要件を満たすと節税できるものがいくつかあります。年間20万円以上の家賃収入がある場合に確定申告を行うと、所得税や住宅ローンの控除、青色申告の特別控除などにより節税が可能です。賃貸併用住宅も自宅とみなされるため、固定資産税の軽減措置も受けられます。

また相続税も節税できます。賃貸併用住宅は、1棟全体が自宅の場合に比べて相続税評価額が下がるため、一定の要件を満たすと「小規模宅地等の特例」が適用されます。

賃貸併用住宅のデメリット

賃貸併用住宅のデメリットと言えば、金銭的な負担が大きいことでしょう。他にも、入居者に関連するリスクがあることや、手放した時の売却の難しさなどが挙げられます。

金額面での負担

賃貸併用住宅は、建物自体が大きくなる分ローンの借入額も増します。もし収入が一定額に満たなければローンの審査に通らない可能性も。また入居者が入れ替わるタイミングで、原状回復の修繕費は故意でなければオーナーが負担することになります。

必要コストは、建物の構造により大きく変動しますが、例として概算すると、木造2階建てで坪75~110万円、軽量鉄骨造2~3階建てで坪80~120万円、重量鉄骨造3~5階建てで坪90~130万円、鉄筋コンクリート造3~5階建てで坪100~140万円です。これらを加味し、予め無理のない計画を立てましょう。

入居者に左右される部分が生じる

オーナーと入居者の暮らしの距離が近いため、気を遣ったりプライバシー面で困ったりするシーンが出てくる可能性があります。また過ごしにくい物件になってしまった結果、部屋が埋まらないリスクも考えられます。想定されるデメリットを生まないためには、設計からしっかりと配慮をしましょう。

手放したくなった時に売却するのが難しい

賃貸併用住宅は、一般的な住宅の購入希望者や、アパートの購入希望者からは購入対象になりづらく、限定的になってしまうデメリットが。将来売却も視野にいれるなら、売却しやすいような建物プランを練ったり、賃貸の収益性を確保したりすることが大切です。予定外の売却で困らないために、あらゆるイメージをもって計画を立てましょう。

賃貸併用住宅の建築から賃貸経営までの流れ

賃貸併用住宅を検討し始めたら、専門家に相談しましょう。ここでは、賃貸併用住宅の建築の検討から自宅部分・賃貸部分への入居までの大まかな流れを説明します。

建築を検討~専門家へ相談

賃貸併用住宅の検討を始めたら、建築予定地が賃貸併用住宅の建設に合っている土地なのか、ニーズの有無などもリサーチします。検討の早めの段階でハウスメーカー、工務店、設計会社など、プロに相談すると安心です。特に間取りの決め方は、複数の視点を持ってしっかり詰める必要があります。

「エリア特有の人気の間取りを実現する」「自宅部分の広さから賃貸部分を逆算する」「希望する賃貸料から考える」「上下左右どのように区切るか決める」「何階建てにするか考える」など、なるべく多くの角度から考えましょう。自治体ごとに制定された建ぺい率と容積率も忘れずにチェックをしてくださいね。

プラン策定~会社を選定・契約

要望や予算から担当会社と建築のプラン策定をします。プラン策定とともに、家賃収益を合わせた資金計画を作成してもらえるとベスト。この段階では、数社を比較検討しても構いません。尚、プラン策定には申込金が発生する場合もあります。会社を決定し契約を結び、ローンの承認を受けた後、つなぎ融資で着工金を支払います。

建築作業~入居者の募集

着工金の入金をもって、建築作業が開始されます。木造住宅の建築期間は約4ヵ月、規模が大きいと半年を越えることもあります。建築作業と並行して、入居者の募集を開始。賃貸管理は建築を依頼した会社や、不動産会社と契約します。

賃貸併用住宅完成~自宅部分・賃貸部分への入居

建物が完成したら、残金をローンで支払います。自宅部分への引っ越しするのと同時に、建築中に募集した入居者を受け入れ、家賃の受領を開始します。ここまでが大まかな流れです。

賃貸併用住宅を建てる会社の選び方

 賃貸併用住宅を建てた後、安定した賃貸経営をするためには、パートナーとなる会社選びが大切です。最後にハウスメーカーや工務店などの会社の選び方を紹介します。

賃貸併用住宅の施工実績がある会社を選ぶ

賃貸併用住宅は、一般的な住宅に比べて数もぐっと少なく、実績も多くありません。取り扱っていない会社もあるでしょう。そのため、まずは過去に賃貸併用住宅の建築実績がある会社を候補に選んでください。

賃貸経営についてのノウハウがある会社を選ぶ

賃貸経営を安定して稼働させるためのノウハウを持っていて、積極的に提案してくれる会社が良いです。アパートやマンションの設計や管理をしている会社であれば、賃貸ニーズに精通していることが期待できます。

ローンについての相談に乗ってくれる会社を選ぶ

金融機関とのやりとりをサポートしてくれたり、金融機関を紹介してくれたりする会社であるかもポイントです。会社からの紹介を受けて金融機関を訪れた方が安心感があり、場合によっては好条件で融資を取り付けられることもあるようです。

住宅展示場で相談するのもおすすめ

実際のモデルハウスを見ながら複数の住宅会社の専門家に会って話せる住宅展示場へ行ってみましょう。事前に予約しておくと相談もスムーズです。

賃貸併用住宅は事前計画が大切

 賃貸併用住宅は、建築前にしっかりと計画を立てることが成功の鍵を握ります。専門知識と実績が豊富な住宅会社をパートナーにするために、まずは住宅展示場でお気軽に相談してみてください。