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湘南お店情報

「湘南佐藤農園」の完熟トマトを野菜たっぷりピザで召し上がれ
2024.01.10

藤沢で生まれ育って数十年。ぷらっと、街歩き・山歩きが趣味のまりっぺです。
年間を通して温暖で暮らしやすい藤沢市。湘南の海岸を含む市内南部は、藤沢駅や辻堂駅周辺の再開発が行われ、日々発展をとげています。北部エリアは、小田急線を含む3つの鉄道路線や、東名高速道路のICからも近く、さまざまな産業が栄えています。なかでも、こだわりの農作物を栽培する農家さんが数多くいらっしゃいます。

今回は、藤沢の北部にある「湘南佐藤農園」を取材しました。こちらの農園は、最先端農法を取り入れたフルーツトマト栽培のほか、年間約30種類の野菜を育てる農家さんです。一方で、2021年に本格ピザ店「畑のキッチン」をオープン。当初はキッチンカーのみの販売でしたが、翌年には小田急線・善行駅前に店舗も構えてしっかりと根を広げています。持ち前の挑戦心とアイデアで経営するのは、100年続く農家を継いだお婿さんです。

善行駅前にある「畑のキッチン」店頭には、佐藤さんの畑で採れた野菜やフルーツトマトを使った100%濃縮ジュースを販売。野菜の直売所感覚で立ち寄る方も多いそう

 

ナポリの漁師にも食べさせたい!?トマトの旨味凝縮の“マリナーラ”

トマト栽培を営む妻の実家を継ぎ、2014年に「湘南佐藤農園」を立ち上げた佐藤智哉さん。本格ピザ店を開業するきっかけは、味は劣らないのにキズやサイズなどで販売できない“規格外トマト”の販路開拓。そして、畑で採れた旬の野菜たちを味わってもらいたいという想いから。キッチンカーの出店場所は、佐藤さんの野菜を卸す直売所を中心に、今では一日で100枚近く販売することもあるそうです。「ピザの仕込みの場も兼ねて、農園からも近い駅前で店舗を構えました。店頭には野菜も並べ、近隣の飲食店さんが仕入れに買われていく姿もあるんですよ」と誇らしげ。爽やかな白と水色を基調にした店内は、サーフィンが趣味という佐藤さんらしい内装です。

今回は10種類ほどあるピザから、フルーツトマトをたっぷりのせた「農園トマトのマリナーラ」を注文。18世紀にナポリの漁師が好んで食べたという“マリナーラ”は、トマトとニンニク、オレガノをトッピングしたシンプルなピザで、チーズがのっていないのも特徴。ひとくち食べると、フルーツトマトを使ったソースのコクとトッピングされたフレッシュトマトの甘味がジュワっとあふれ出し、皮も薄く口触りよく滑らかです。チーズがないのに満足感はしっかりとあり、これほどまでにマリナーラを引き立てるトマトはないのでは!?

写真左から=湘南佐藤農園代表・佐藤智哉さん、妻の夏生さん、智哉さんのお母さん、スタッフの井上さん。この日は智哉さんのお母さんが、ピザ生地の仕込みを担当。厨房からピザの良い香りが広がります

約500℃の窯で焼き上げる「農園トマトのマリナーラ」は、コク豊かで甘味のあるフルーツトマトの味わいを存分に楽しめる一品。手作りのピザ生地も香ばしくふわもち食感

 

手作りピザの決め手は、完熟フルーツトマトを使った贅沢ソース

キッチンカーを開業するまで飲食業の調理経験がゼロだった佐藤さん。美味しいピザを作るため、レストラン巡りなどをして家族や農園スタッフを交えて研究を重ねました。そこで、トマト生産者ならではの“強み”を実感したそうです。それは、一般的にピザソースに使うトマトは原価の高い国産品は使用せず、輸入されたホール缶を使用しているということ。「当店では、規格外ではありますが採れたての完熟のフルーツトマトを濃縮し、濃厚なピューレに加工して使用しています」。ピザの決め手はソースの美味しさ!野菜の美味しさも引き立ちます。

「湘南佐藤農園」のトマトは、減農薬で栽培され栄養価も豊富。店頭で販売している完熟のフルーツトマトを使ったジュースは、酸味や青臭さがなく、トロトロと濃厚でフルーツのような甘味が広がります。ひとくち飲めば、まるで体に栄養が流れていく感覚。「畑のキッチン」で提供する料理も、添加物や化学調味料を極力使っていないそうです。一枚丸ごと食べても胃もたれしにくくシニア世代にも評判なのは、前職である治療食専門の食品メーカーで培った経験からなのかもしれません。

真っ赤に完熟させたフルーツトマトを使った、果汁100%ジュース。トロトロと濃厚でフルーツのような甘味が広がり、トマトが苦手な人にもオススメ

 

未経験だった農業は、思い描いたことをカタチにできるから面白い

実は佐藤さん、かつてのサラリーマン時代は外資系人材派遣会社や治療食専門の食品メーカーで営業経験もあり、幅広い経歴の持ち主。奥さまに出会うまで農業には縁遠く、「結婚するなら実家の農家を継いでほしい」と言われたことが転身のきっかけだったそうです。自然環境と調和するサーフィン好きもあってか、土と触れ合うことに違和感はなかったと振り返ります。「就農前、義父にイチゴを育ててみたいと話したら、ビニールハウスを1棟丸ごと貸してくれました。栽培方法について詳しい指導はなかったものの、未経験だった農業も自分で調べて判断し、挑戦する習慣がついたのかもしれません」。

ですが結婚当初の2011年、大型台風によってトマト栽培のビニールハウスが被害を受け、佐藤さんは一度離農。サラリーマンに戻りますが、義父の急逝で再度就農を決意。現在の「湘南佐藤農園」を立ち上げることになったのです。

露地野菜では土づくりにもこだわり、化学肥料の割合を減らして有機肥料を多く使用。現在は、キャベツやレタス、トウモロコシなど年間約30種類の野菜を栽培

“本当に美味しい野菜”に集約し、新たなにぎわいづくりが目標

夏野菜のイメージがあるトマトですが、「湘南佐藤農園」のフルーツトマトが最も甘くなるシーズンは1月~2月ごろ。周辺のトマト農家さんも12月~6月ごろが最盛期です。というのも、藤沢市は“冬春トマト”の国指定産地として、このシーズンに多く出荷されているから。近年では、バラエティに富んだ品種が生産されたりと、各農家さんが切磋琢磨しています。佐藤さんが農業を受け継ぐとき、「もっと美味しいトマトを作りたい。それなら根本となる土壌から変える必要がある」と行きついたのが、「アイメック農法」です。これは特殊フィルムに根を張らせて、最低限の水分と養分で植物本来の生命力を引き出し、栄養価や美味しさを高める新しい農法。一般的なトマトの糖度は4~6度と言われますが、佐藤さんのフルーツトマトは最盛期で9度にもなります!

未経験でも臆せずに、さまざまチャレンジを続ける佐藤さん。今後の目標を伺うと、「四季折々に収穫できる野菜から“本当に美味しいもの”に集約していきたい。そして、イチゴ栽培を拡大して観光農園を行ったり、畑にヒマワリを植えて小田急線の電車を背景に写真スポットにしたり、キッチンカーも続けながら畑ににぎわいを増やしていきたい」と、その光景がはっきり見えているように教えてくれました。全国的にも農業者の高齢化などで後継者不足が課題となっていますが、暮らしや遊びに、農業も調和させてしまおうとは湘南エリアならでは!?大きく葉を広げるように、新たな交流の輪も広がります。

「アイメック農法」で栽培するフルーツトマト。現在、藤沢市の農業を盛り上げようと援農ボランティア講座の講師や、農地利用最適化推進委員としても活躍。佐藤さんの農園でも、多くのボランティアさんや研修生が汗を流しています

 

湘南佐藤農園 畑のキッチン

藤沢市善行7-3-1
徒歩:小田急線善行駅東口徒歩約1分
TEL:070-2037-3100
営業時間:11:00~14:00(土日/14:30まで)/金土日17:00~20:00
定休日:月曜日
HP:https://www.shonansatonouen.com/
野菜の直売所や最新情報などは、HPインスタグラムでチェックを。

まりっぺ
学生時代は江ノ電と自転車を乗りこなし、海でたそがれていました。
一男一女を育てる親になり、改めて、仕事や暮らし、遊びにちょうどいい湘南エリアの魅力を感じています。子供のころと変わらない昔ながらの商店や個性あふれるショップ、四季折々の地元食材や目新しいグルメなど、なつかしさと新しさが共存する空気感が心地いい~。