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湘南の住宅街でハチミツ採集!? 「中野養蜂園」のミツバチ愛
2023.11.07

藤沢で生まれ育って数十年。ぷらっと、街歩き・山歩きが趣味のまりっぺです。
海のイメージがある湘南ですが、100%天然にこだわる養蜂園があるのをご存じですか?しかも、湘南エリア最大級の大型ショッピングセンターがあるJR辻堂駅の南側、海まで歩いて約15分ほどの住宅街でミツバチが飼育されているんです。

その名もズバリ「湘南はちみつ」という名称で、小瓶に貼られた食品ラベルには、“辻堂海岸の蜂蜜”としっかり原料が記載されています。これを生産・販売するのは、神奈川県内の数か所で養蜂園を持ち、国内外のハチミツを取りそろえる“生粋”のハチミツ専門店「中野養蜂園」。養蜂家として4代目を継ぐ中野拓哉さんに、ハチミツの魅力をた~っぷり伺いました。

ふじさわ観光名産品に選ばれる「湘南はちみつ」。【春】(左/4~6月に採集)はさっぱりと食べやすく、【夏】(右/7~8月に採集)は春に比べて色味が濃く、コクのある味わい。 ※1歳未満の乳児には、ハチミツは与えないでください

 

「湘南はちみつ」誕生で、ミツバチがつなぐ交流の輪

この辻堂で生まれ育った中野さんですが、創業者である曾祖父は静岡の山間で養蜂園を営み、2代目の祖父は養蜂業を続けながら療養も兼ねて辻堂に移住。これをきっかけに、1965年に店舗をオープンしました。

当初は店頭に並ぶハチミツの種類は少なかったものの、父の代からラインナップを増やし、4代目となった中野さんが新たな湘南の名産品を目指して「湘南はちみつ」の採集に着手。店舗裏側のベランダに5つの巣箱を設置しました。「畜産業に分類される養蜂家として、近隣にご迷惑をかけることがないよう管理しています。もちろん、ミツバチの群れが巣箱を抜け出して、新たな場所で巣作りをすることはありません」と断言できるのは、代々の養蜂技術や知識に加え、日々真摯に向き合ってきた経験の表れです。「湘南はちみつ」が誕生して10年以上たった今では、日常使いや地元ならではの手土産として選ぶ方だけでなく、ハチミツ採集に適した花を自宅の庭に栽培される方もいるなど協力的。ミツバチが花から花へ花粉の媒介をするように人と人との交流が息づいています。

「中野養蜂園」代表の中野拓哉さん。幼少時代から養蜂に慣れ親しみ、小さな命を扱う養蜂のプロとして、会話の節々からミツバチへの愛情が感じられます

「湘南はちみつ」は、辻堂東海岸の庭木や公園の花から集めた“地域の味”。希少価値の高いハチミツですが、気軽に味わえるよう、お値段は良心的(100g540円・瓶入りのみ/売り切れ次第終了)

 

100%天然ハチミツの風味の違いは、実感しなくちゃ分からない

そのほか店内には、国内外の産地や花の名前が書かれた大きなタンクがズラリ!ハチミツの季節や採集量に合わせて、合計12~13種類並びます。どれも風味が異なるため、用途ごとに使い分けたりする方もいるほど、味の違いは歴然のようです。

私にも、その違いが分かるものだろうかと半信半疑で試食をさせていただくと…。
一番人気のハンガリー産「アカシア蜂蜜」は、慣れ親しんだ風味ながら、クセがなくコク豊かでスッキリとした後味。愛媛県産「みかん蜂蜜」は、果実そのものの風味とは違い夏に咲く花を思わせる爽やかさ。ミツバチが複数の花のミツを採集した「百花蜂蜜」は、花畑を感じるような軽やかさがあります。ひと匙のハチミツでも、口に入れると存在感いっぱいに、その魅力が広がります!

明るくウッディな店内には、大きなタンクに入ったハチミツをはじめ、専門店ならではの関連商品を所狭しと陳列。試食もでき、「湘南はちみつ」以外のハチミツは量り売りのため、容器持参ならその分お得!

 

ハチミツだけじゃない、働き者のミツバチからいただく多彩な恩恵

さらに、健康や美容をサポートするマヌカハニーや生ローヤルゼリー、プロポリスなどの厳選品が並ぶ中、目に留まったのは小さくて丸い粒のスペイン産「ビーポーレン」。こちらも試食させていただくと、少しだけスパイス感のあるきな粉のような味わいがします。

「ミツバチが集めた花粉を自らの酵素で団子状に固め、後ろ足に着けて巣に運んでいるものです。ビタミンやミネラルが豊富で、ヨーグルトやスムージーに混ぜて食べると美味しいですよ」とのこと。この一粒一粒を見ると、働きバチたちが健気に活動してくれることで、私たち人間は多くの恩恵を受けていることに、改めて感謝の気持ちがわいてきます。ちなみに、「中野養蜂園」のミツバチたちも“仕事”の幅を広げ、数年前から平塚にあるマンゴー農園で受粉作業のお手伝いを始め、来年からは藤沢のブルーベリー農園でも活躍予定だそう。我が子を送り出すように、中野さんも誇らしげです。

ニュージーランドの検査基準に適合した「マヌカハニー」を、体調管理に合わせてグレード別に用意

ミツバチたちが一生懸命作った、ちょっといびつな形の「ビーポーレン」(スペイン産)

地産地消のハチミツが味わえる湘南エリアの環境を、将来につなぐ

天然の美味しさや栄養価の高さだけでなく、植物の受粉に貢献すると評価される一方で、日本では流通するハチミツの9割が外国産といわれています。また、以前は米農家さんが休耕中の緑肥作物としてレンゲを植えることが多く、この花からの採集量も多かったようですが、化学肥料の普及などもありレンゲ畑が減ってしまいました。「ハチミツ採集のために、私がレンゲを栽培したいくらい」と話すのは、ミツバチへの愛情が深い中野さんならでは。また、近隣の住宅地に住み着いてしまったミツバチを捕獲して森へ帰す保護活動や、地元の保育施設にミツバチを連れて食育活動も行い、益虫であるミツバチを守っています。

取材後、お店から辻堂駅までの帰り道、きれいに手入れがされた家々の花壇や公園の樹木が目に入りました。住宅街で採集されたハチミツを味わえる、湘南エリアの環境をこれからも大切にしなくてはと改めて感じさせられました。

 

「湘南はちみつ」の巣箱は合計5つ。夏の収穫期が終わり、来年の春に向けて天敵となるスズメバチからミツバチを守っています

 

ミツバチの行動範囲は巣から半径約2Km。辻堂駅までは行動範囲のため、駅周辺でミツバチをみかけたら中野養蜂園から飛んできたのかもしれません

 

中野養蜂園(なかのようほうえん)

藤沢市辻堂東海岸1-16-8(駐車スペースあり)
徒歩:JR辻堂駅南口徒歩約20分
バス:藤沢駅北口より江ノ電バス「出口」下車、神奈中バス「出口(神奈中)」下車

TEL:0120-38-0875
営業時間:9:00~18:00
定休日:日曜日
HP:http://www.nakano-youhou.com/
最新情報などはフェイスブックhttps://www.facebook.com/nakanoyouhouでチェックを。

まりっぺ
学生時代は江ノ電と自転車を乗りこなし、海でたそがれていました。
一男一女を育てる親になり、改めて、仕事や暮らし、遊びにちょうどいい湘南エリアの魅力を感じています。子供のころと変わらない昔ながらの商店や個性あふれるショップ、四季折々の地元食材や目新しいグルメなど、なつかしさと新しさが共存する空気感が心地いい~。